JR両国駅から徒歩2分、
墨田区両国の内科・脳神経内科・老年内科・脳神経外科

頭痛外来

頭痛外来について

頭痛外来について

「MRI検査が問題ないから、痛み止めを飲めば大丈夫」で終わらせていませんか?

日本国内の頭痛持ちの方は4,000万人、緊張型頭痛の方は2,000万人、片頭痛の方は840万人おり、頭痛は多くの方を苦しめている国民病の1つです。頭痛の原因となる疾患は、くも膜下出血、髄膜炎、脳腫瘍などが重篤な疾患が原因の場合もありますが、頭痛の原因となる多くの疾患 は、頭部MRI検査では異常を認めないことから、症状、経過の問診、神経診察から総合的に診断をします。

頭痛の治療は、原因疾患の診断を元に、症状の程度、年齢、性別、ライフスタイル、併存症などを考慮して、適切な治療を選択します。長期間の鎮痛剤の使用過多は、頭痛が更に悪化し、鎮痛剤が徐々に効きにくくなる、薬物乱用頭痛を合併する場合があるため、鎮痛剤の効果が乏しい方、頭痛が長期に継続する方は、医療機関に受診することが望まれます。
当院では、頭痛専門医、大学関連病院での頭痛専門外来での経験を生かし、適切な診断、患者さんの希望に沿った治療を提供を行うように心がけています。片頭痛の予防治療薬であるCGRP関連製剤(エムガルティ®、アジョビ®、アイモビーグ®)の投与も可能です。頭痛に悩まれている方は、お気軽にご相談ください。

  • 頭痛の原因が知りたい。
  • 鎮痛剤があまり効かない。
  • 鎮痛剤の飲みすぎで胃腸の調子が悪い。
  • どの鎮痛剤を飲めばいいかわからない。
  • 頭痛予防薬が必要か判断してほしい。
  • 頭部MRI検査が必要か判断してほしい。
  • 頭部MRI検査は大丈夫と言われたけど、頭痛が続いていて心配。
  • CGRP関連製剤って何?
  • 「エムガルティ®」、「アジョビ®」、「アイモビーグ®」などのCGRP関連製剤を始めたい。
  • 脳卒中などの重篤な疾患が疑われる場合には、救急要請、中核病院への受診をお願いする場合があります。
    激烈な頭痛や顔面、手足の麻痺を伴う頭痛の場合には、受診前に必ずお問い合わせください。 脳卒中についてはこちら
あなたの頭痛重症度は?

痛みの頻度、 日常生活への影響、精神的負担などの6つの質問で、慢性頭痛に悩んでいる方の、頭痛の日常生活への支障度を数字で評価することができます。36-78 点で、60点以上では特に日常生活への支障が大きいとされます。

頭痛インパクトテスト (HIT-6’Headache Impact Test-6)

左右へ移動し、6つの設問へ答えていただくと、合計点数が表示されます。

この表はスワイプできます
設問内容 全くない
(+6点)
ほとんど
ない
(+8点)
時々ある
(+10点)
しばしば
ある
(+11点)
いつも
そうだ
(+13点)
問1
頭が痛いとき、痛みがひどいことがどれくらいありますか?
問2
頭痛のせいで、日常生活に支障が出ることがありますか?
(例えば、家事、仕事、学校生活、人付き合いなど)
問3
頭が痛いとき、横になりたくなることがありますか?
問4
この4週間に、 頭痛のせいで疲れてしまって、
仕事やいつもの活動ができないことがありましたか?
問5
この4週間に、頭痛のせいで、
うんざりしたりいらいらしたりしたことがありましたか?
問6
この4週間に、頭痛のせいで、
仕事や日常生活の場で集中できないことがありましたか

合計点数と評価

合計
0
スコアが
60以上の場合
頭痛が日常生活にかなりの影響を与えています。
正常な生活機能を妨げる程の激しい痛みやその他の症状が、
頭痛に悩まされる他の人々よりも重症です。
頭痛が、家庭、仕事、学校や社会活動などにおける
大切な活動を妨げないように注意が必要です。
HIT-6のスコアと頭痛に関して
医師にご相談されることをお勧めいたします。
スコアが
56~59の場合
頭痛が日常生活にかなりの影響を与えています。
すなわち激しい痛みやその他の症状のために、家庭、仕事、
学校や社会活動が妨げられている場合があります。
HIT-6のスコアと頭痛に関して
医師にご相談されることをお勧めいたします。
スコアが
50~55の場合
頭痛が日常生活にある程度の影響を与えています。
頭痛により家庭、仕事、学校や社会活動が
妨げられている状況は正常とはいえません。
次回、診察を受ける際に、
HIT-6のスコアについて必ず医師に相談ください。
スコアが
49以下の場合
現状では、頭痛が日常生活にほとんど、
あるいはまったく影響を与えていません。
今後も毎月1回HIT-6テストを受け、頭痛が日常生活に
どのような影響を与えるかを知っておくことをお勧めします。

HIT-6のスコアが50以上の場合は、医師とご相談ください。 日常生活に影響を与えている頭痛は、片頭痛である可能性があります。

医師の診察を受ける際に、HIT-6を持参してください。研究によると、患者さんが日常生活においてどの程度頭痛に悩まされているかを正確に知ることで、医師はより効果的な治療方法を提供することができると報告されています。この治療法には、薬物 療法が含まれる場合があります。

代表的な頭痛の原因疾患

一次性頭痛
片頭痛
緊張型頭痛
三叉神経・自律神経性頭痛(群発頭痛、発作性片側頭痛など)
二次性頭痛
椎骨動脈解離, くも膜下出血, 脳出血, 静脈洞血栓症, 硬膜下血腫, 可逆性血管攣縮症候群 副鼻腔炎, 髄膜炎, HIV脳症, 神経梅毒, 新型コロナウイルス感染症, インフルエンザ, 感染性心内膜炎, 高血圧緊急症, 肥厚性硬膜炎, 巨細胞性動脈炎, Crown dense症候群 薬物乱用頭痛, 精神疾患による頭痛, ミトコンドリア脳筋症, 脳腫瘍, アミロイドアンギオパチー, 橋本脳症, 低髄圧症候群
その他
後頭神経痛, 三叉神経痛, Tlosa-hunt症候群

国際頭痛分類第3版, 頭痛の診療ガイドライン2021などを元に院長作成

上記は、頭痛の原因となる疾患の代表例で、私が今まで実際に診断したことのある頭痛の原因となる代表的な疾患です。頭痛は、一次性頭痛、二次性頭痛の2つに大きく分類されます。

一次性頭痛

筋肉の緊張、脳血管の拡張、炎症などにより、脳神経が刺激されることで痛みが生じ、「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」などが代表例で、頭部MRI検査では、異常を認めません。診断は、検査による二次性頭痛の除外、頭痛の部位、性状、頭痛以外の症状、前兆の有無、病歴などの問診、神経学的診察により行います。

二次性頭痛

くも膜下出血、脳出血といった脳卒中、脳腫瘍、髄膜炎などの他疾患に併発する新規の頭痛が生じ、その疾患が頭痛の原因となると認定された場合に診断されます。特に、50歳以上の、突然の発症、普段とは性状が異なる頭痛は、命にかかわる二次性頭痛の可能性が高く、注意が必要です。
しかし、片頭痛、緊張型頭痛などの一次性頭痛に、脳梗塞や髄膜炎、副鼻腔炎など二次性頭痛を合併し、頭痛が悪化している場合など、一次性頭痛に二次性頭痛が合併していることもあるため、頭部MRI検査だけではなく、頭痛の症状、経過の問診、神経学的診察により、適切な診断を行う必要があります。

頭痛外来の大まかな流れ

頭痛外来で診療した患者様の特徴

頭痛総論、大学関連病院での頭痛外来

上記は、大学関連病院の頭痛専門外来で私が診療した患者さんの特徴です。片頭痛は若い女性、緊張型頭痛はや年齢が高い女性、群発頭痛は中年の男性に多く、頭痛の原因疾患は年齢、性別の特徴があります。頭痛の原因診断には、問診、神経診察、検査結果に加えて、頭痛診療の経験、疫学的なデータも重要です。

  1. 問診、神経診察

    頭痛の診療では、問診が最も重要です。頭痛の部位、時間、回数、増悪悪化因子、随伴症状などの問診、神経症状の診察で大半の方は原因疾患の診断が可能です。
    頭痛外来専用の問診票への記入、過去や今までの治療薬を事前にWEBで記入いただくと診療がスムーズです。

    WEB問診はこちら(準備中)
  2. 検査

    診断、治療方針決定のため、原則1回は、当院での採血検査、連携医機関での頭部CT、MRIなどの画像検査の施行をお願いしています。
    1年以内に各種検査を行っている場合には、当院での検査が不要の場合もあります。
    他院での検査結果をお持ちの方は、CD-Rなどを必ず受診前に受付にお出しください。

    • 当院では、頭部CT検査、頭部MRI検査は行えません。検査が必要な場合は、連携医療機関へご紹介させていただきます。
  3. 治療

    問診、神経診察、検査所見から頭痛の原因疾患の診断をします。原因疾患の診断後に、症状、年齢、性別、ライフプラン、併存症にあった治療を開始します。

    当院で可能な頭痛の代表的な治療

    • 「エムガルティ®」「アジョビ®」「アイモビーグ®」などの片頭痛予防注射よる片頭痛の予防治療。
    • 「アセリオ®」「プリンペラン®」「スマトリプタン®」などでの急性期治療。
    • 群発頭痛の対する純酸素投与。

疾患について

片頭痛

片頭痛の病態(三叉神経血管説)

片頭痛の病態(三叉神経血管説)

片頭痛とは?

痛み止めを飲みながら、頭痛を我慢するのが当たり前になっていませんか?

片頭痛は、仕事や日常生活に支障をきたす主要疾患のトップ20に入っており、日本国内の患者数は800万人に及び、片頭痛発作により毎日60万人の日本人が苦痛を感じています。片頭痛の有病率は、女性が男性の4倍、75%の方が35歳以前に発症し、特に若い女性の患者さんに多い疾患です。
片頭痛では、拍動性頭痛(ズキズキ、脈を打つような頭痛)以外にも、悪心、めまい、周囲の光、音、匂いへの過敏、集中力低下などを伴います。また、体動で悪化することが特徴であり、仕事、家事、育児などにしばしば大きな支障をきたします。

近年、片頭痛の病態が徐々に明らかになり、頭蓋内組織に分布する三叉神経終末が、刺激を受けるとカルシトニン遺伝子関連ぺプチド(CGRP: Calcitonin Gene-Related Peptide)、サブスタンスPなどを放出し、局所的な炎症、血管拡張が生じ、頭痛発作が引き起こされるという三叉神経血管説が考えられています。

2021年には、片頭痛の発症に関与する物質であるCGRPをブロックすることにより、片頭痛を予防するCGRP関連製剤(エムガルティ®、アジョビ®、アイモビーク®)、2022年には、新しい作用機序による片頭痛発作治療薬であるlasmiditan「レイボー®」が登場し、片頭痛の治療は大きな転換期を迎えました。新規治療薬の登場により、多くの方が、頭痛から解放され、仕事、家事、育児に支障をきたさないで生活できるようになりました。海外では、他の新規治療も登場しており、今後、片頭痛で苦しむ方がいなくなる時代がくるかもしれません。
鎮痛剤の過剰な内服、精神的、肉体的ストレスで片頭痛が悪化すると、治療が難しくなるケースもあります。片頭痛が悪化する前に、当院へご相談ください。

片頭痛の診断・特徴(POUND ing)

Pulasting
拍動性(ドクドクする)
duration
4-72hOurの持続時間(4時間-3日頭痛が続く)
Unilateral
片側性(頭の片側だけ頭痛がある)
Nausea
悪心(気持ち悪い、吐き気)
Disabling
生活支障度が高い(頭痛が仕事、家事など日常生活に支障を及ぼす

補助的に頭部MRI検査、採血検査などを行う場合もありますが、片頭痛の診断は主に診断、神経学的診察で行います。上記の5つの片頭痛の特徴のうち、4つ以上の方は、片頭痛の可能性が高く、2つ以下の方では片頭痛の可能性が低いことが知られています。

その他の片頭痛の特徴として、運動、体動での頭痛の悪化、肩こり、首の痛み、音や光へ過敏、めまい、倦怠感などを頭痛に伴うことが多いことがあります。香水などの匂いによって、頭痛が誘発、悪化することは、片頭痛と他の一次性頭痛の鑑別要因となることも報告されています。
また、片頭痛という名前ですが、頭痛部位は、頭の片側だけとは限りません。片側性が60%、両側性が40%であり、頭の両側、頭全体が痛くなる方など様々です。

片頭痛は、年齢による変化、鎮痛剤の過剰使用(薬物乱用頭痛の合併)、慢性化により、非典型的症状、経過を辿る場合があるため、上記の特徴に当てはまらない場合でも、片頭痛は否定できません。肩凝り、首が痛い、両側の頭痛でも、緊張性頭痛とは限りませんのでご注意ください。

片頭痛の経過
片頭痛の経過

片頭痛は、食欲亢進、疲労感、あくび、知覚過敏などの予兆期、閃輝暗点などの前兆期を経て、頭痛発作が生じます。頭痛発作後にも、食欲低下、疲労感、抑うつ症状が残存する方もいます。片頭痛での前兆期では、閃輝暗点などの視野障害(視野周辺がキラキラして、徐々に視野が狭くなる)が有名ですが、前兆を伴う片頭痛は片頭痛全体の20%のみであり、閃輝暗点などの前兆を伴わない片頭痛のほうが多いので、視野障害がなくても片頭痛の可能性は充分あります。

片頭痛が慢性化している方では、常に頭が重く、だるさ、疲労感、食欲低下、気分不調があるのが当たり前になっている方もいらっしゃいます。CGRP関連製剤(毎月1回の皮下注射)の開始により、頭痛の回数、程度の改善だけではなく、頭痛がない時の生活が変わる可能性もあるので、お困りの方はご相談ください。

年齢での片頭痛の変化
年齢での片頭痛の変化

片頭痛は、年齢により特徴が異なります。頭痛のピークは男性が30歳前後、女性が40歳前後と、女性のほうがややピークの年齢が高いです。また、女性での片頭痛は、エストロゲンなどの女性ホルモンの影響を大きく受け、妊娠、出産、授乳などにより、頭痛の程度は変化します。
60歳以上で片頭痛を発症することは稀であり、多くの方は、50歳前後から頭痛は自然に改善していきます。50歳以上で、急激に頭痛が悪化した場合には、2次性頭痛をまずは考えましょう。
年齢に伴い、片頭痛の症状は、加齢と共に、徐々に変化するので、注意が必要です。

片頭痛の治療

非薬物療法
  • 頭痛体操
  • 認知行動療法
  • 生活指導
二次性頭痛
  • 急性期治療薬:トリプタン製剤, ジタン系製剤, アセトアミノフェン,NSAIDs, メトクロプラミドなど
  • 予防治療薬:プロプラノロール, ロメリジン, バルプロ酸ナトリウム, アミトリプチン, メトプロロール, ガルカネズマブ, フレマネズマブ, エレヌマブなど
  • その他:呉茱萸湯, 五苓散, 抑肝散, 葛根湯 など

国際頭痛分類第3版, 頭痛の診療ガイドライン2021などを元に院長作成

片頭痛の治療は、鎮痛剤の内服だけではありません。鎮痛剤の過剰内服、精神的、肉体的ストレスで悪化していくと、片頭痛が慢性化し、治療が難しくなるケースもあります。片頭痛の治療は、頭痛体操、認知行動療法、生活指導を中心とした非薬物療法と薬物療法に分けられます。
頭痛時には、薬物に頼りがちですが、肩凝り、睡眠不足、疲労などの精神、肉体的なストレス、高度肥満 いびき、睡眠時無呼吸症候群、顎関節症、うつ病の合併、カフェインやアルコールの過剰摂取、ビルの使用などが原因で片頭痛悪化している場合もあります。
薬物治療だけではなく、精神的、肉体的ストレスの軽減、規則正しい食事、睡眠、運動などの非薬物療法のみで、頭痛が改善するケースもあります。頭痛が軽度の方は、まずは、薬物以外の治療をはじめてみましょう。

片頭痛の薬物治療

  1. 急性期治療薬
    トリプタン製剤

    急性期治療薬は、鎮痛剤(痛み止め)のことで、頭痛悪化時に屯用で使用します。急性期治療薬の中でも、トリプタン製剤は片頭痛専用の鎮痛剤ですが、冠動脈疾患、脳梗塞、不整脈、高血圧の既往がある方には使用できないため注意が必要です。

    急性期治療薬の過剰内服は、薬物乱用頭痛の合併につながり、片頭痛の重症化につながるので、最大でも月に10回程度の使用を目安とし、10回以上使用する場合には、予防治療薬を検討しましょう。
    急性期治療薬は、薬剤ごとに特徴があるため、症状、経過、既往症などを相談しながら、適切な治療薬を選択します。

    一般名 商品名 用量 長所(私見あり) 短所(私見あり)
    スマトリプタン イミグラン® 内服
    50-200 mg
    点鼻
    20-40 mg
    自己注射
    3-6 mg
    妊婦でも比較的安全に使用可能。
    授乳まで12時間空ければ使用可 (他製剤は 24時間)。
    喉、頚部の締め付け感強い。
    持続時間がやや短い。
    MAO-B阻害薬併用禁止。
    ゾルミトリプタン ゾーミック® 内服
    2.5-10 mg
    口腔内溶解錠あり
    経口での吸収率が高い。
    錠数で用量の調整しやすい。
    MAO-B阻害薬併用禁止。
    エレトリプタン レルパックス® 内服
    20-40 mg
    持続時間が長め。
    副作用が少ない。
    母乳への移行性が低い。
    用量依存的に傾眠, 嘔気など増加。
    HIVプロテアーゼ阻害薬と併用禁止。
    グレープフルーツ禁止。
    リザトリプタン マクサルト® 内服
    10-20 mg
    口腔内溶解錠あり
    最も効果強い。 プロプラノロールと併用禁止。
    MAO-B阻害薬併用禁止。
    透析患者には使用できない。
    ナラトリプタン アマージ® 内服
    2.5-5 mg
    最も持続時間長い。
    月経関連片頭痛では予防薬でも可。
    重度腎障害では禁忌。
    肝、腎障害時は減量必要。
    追加投与まで4時間空ける必要あり。

    竹島多賀夫, 頭痛治療薬の考え方, 使い方改定2版, 2014, 頭痛の診療ガイドライン2021などを参考に院長作成

    あくまで私見ですので、使用する際は、必ずかかりつけ医へご相談ください。

    • 冠動脈疾患、脳梗塞、不整脈、高血圧の既往がある方にも使用できません。
    • 頭痛の前兆期後半から頭痛発作初期に内服しないと、効果が期待できないです。
    • 頚部の締め付け、めまい、嘔気、自動車運転中の眠気を催す場合があるので注意が必要です。
    • 効果判定は、3回程度の使用を目安に行います。
    • 効果がなければ、他の急性期治療薬への変更、予防治療薬の開始、診断の見直しなどを検討する必要があります。
    トリプタン製剤以外の急性期治療薬
    一般名 代表的な商品名 用量(1回) 長所 (私見あり) 短所(私見あり)
    カロナール アセトアミノフェン® 300-1000 mg 副作用少ない、効果が早い。
    妊娠、授乳中、小児でも使用可能。
    効果弱く、緩やか。
    COX阻害作用なく、抗炎症作用なし。
    ロキソニン ロキソプロフェンナトリウム® 60-120 mg 効果が早い。 肝障害、腎障害リスク。
    胃腸障害あり。
    イブプロフェン ブルフェン錠® 200 mg 効果が早い。
    小児でも使用可能。
    肝障害、腎障害リスク。
    胃腸障害あり。
    インドメタシンファルネシル インドメタシンカプセル® 200 mg 効果強い、作用時間長い。
    劇的に効果ある頭痛あり。
    胃腸障害強い。
    妊娠、授乳中、小児では禁忌。
    セレコキシブ セレコックス® 100-200 mg 胃腸障害リスク低い。 頭痛は適応外。
    重篤心不全、妊娠末期など禁忌。
    エルゴタミン・カフェイン・ピリン系配合剤 クリアミン® 1錠 作用時間長い。 悪心、嘔吐、消化器症状など副作用多い。
    妊娠、授乳中の使用、
    トリプタン製剤と併用禁忌。
    メトクロプラミド プリンペラン® 内服 5 mg
    静注 10-20 mg
    制吐作用あり。
    妊婦使用可能。
    錐体外路症状注意。
    褐色細胞腫禁忌。
    ドンペリドン ナウゼリン® 5-10 mg 制吐作用あり。 妊婦使用禁忌。
    錐体外路症状注意。

    竹島多賀夫, 頭痛治療薬の考え方, 使い方改定2版, 2014, 頭痛の診療ガイドライン2021などを参考に院長作成

    あくまで私見ですので、使用する際は、必ずかかりつけ医へご相談ください。

    • 頭痛の前兆期後半から、頭痛発作の初期に内服すると効きやすいです。
    • 中等度以上の片頭痛になると、効果がない方が多いです。
    新規の急性期治療薬 Lasmiditan(商品名: レイボー錠®)

    2022年、lasmiditan(商品名: レイボー錠®)が国内で販売開始になりました。

    レイボー錠®

    Lasmiditan(商品名: レイボー錠®)の特徴

    • 今までの薬剤とは異なる機序で作用する、新しいタイプの片頭痛専用の急性期治療薬です。
    • 同じ片頭痛専用の急性期治療薬であるトリプタン製剤と異なり、レイボー錠®は、冠動脈疾患、脳梗塞、不整脈、コントロール不良の高血圧の既往がある方にも使用可能です。
    • レイボー錠®は、トリプタン製剤の副作用として認められることのある、頚部の締め付け感を認めません。
    • トリプタン製剤は、内服するタイミングを逃すと鎮痛効果が乏しかったですが、レイボー錠®では、内服するタイミングを逃しても鎮痛効果が期待できます。
    • 内服開始初期には、内服1時間以内にめまい感、眠気が現れることが多く注意が必要です。開始時には50mgなどの低容量から開始し、副作用が出現してもいいように、睡眠前や休日に内服し、乗り物の運転は避けてください。
  2. 予防治療薬

    予防治療の主な目的は、頭痛発作の頻度、 重症度、 持続時間の軽減、急性期治療薬の反応性の改善により、生活への支障を軽減することです。予防治療薬を開始する目安は、片頭痛発作が、月に4回/月以上あり、急性期治療薬のみでは、 頭痛の改善が乏しく、日常生活に支障をきたしている方です。特に、脳卒中、心筋梗塞既往、 アレルギーなどにより急性期治療薬の使用に制限がある方、精神的、肉体的ストレスの回避、非薬物療法での頭痛の改善が難しい方、薬物乱用頭痛を合併している方は、積極的に予防治療薬の開始を検討します。

    予防治療の具体的な目標は、頭痛発作回数または日数の50%以上の減少です。予防治療薬は効果発現まで2ヶ月程度かかるため、粘り強く内服を継続することが必要です。

    既存の予防治療薬
    一般名 商品名 用量 長所(私見あり) 短所(私見あり)
    プロプラノロール
    (β1,2-B)
    インデラル® 20-60 mg 妊婦にも安全に使用できる。
    あがり症にも効果あり。
    喘息、うつ病の方では使用避ける。
    リザトリプタンと併用禁忌。
    ロメリジン
    (Ca-B)
    ミグシス® 10-20 mg 副作用が少ないため、使いやすい。
    高齢者でも使用しやすい。
    前兆、めまい抑制効果の報告あり。
    妊婦禁忌。
    錐体外路症状、抑鬱出現する場合あり。
    効果発現に1-2ヶ月程度かかる。
    バルプロ酸Na
    (GABA-B)
    デパケン® 400-600 mg 閃輝暗転が目立つ人に効きやすい。
    前兆抑制効果あり。
    抑鬱改善の可能性あり。
    妊婦禁忌、催奇形性あり。
    肝障害リスクあり。
    体重増加しやすい。
    アミトリプチン
    ※片頭痛では保険適応外
    トリプタノール® 10-60 mg 妊婦にも比較的安全に使用できる。
    緊張性頭痛合併例に有効。
    精神的ストレスが多い人に効きやすい。
    口渇、眠気はほぼ必発。
    前立腺肥大、閉塞隅角緑内障では禁忌。
    呉茱萸湯
    (ごしゅゆとう)
    ツムラ31番® 7.5 mg 頭痛時の嘔気にも効果あり。
    急性期治療薬としても使用できる。
    緊張性頭痛にも有効。
    胃の不快感、食欲不振、発疹、発赤、
    かゆみ、肝機能障害などの副作用あり。
    トピナ
    (AMPA-R-B)
    ※片頭痛では保険適応外
    トピラマート® 100 mg 体重減少する。
    欧米での推奨が高い。
    食欲低下、めまい、傾眠、腎結石、
    疲労感、嘔気、認知能低下の副作用リスクあり。

    竹島多賀夫, 頭痛治療薬の考え方, 使い方改定2版, 2014, 頭痛の診療ガイドライン2021などを参考に院長作成

    あくまで私見ですので、使用する際は、必ずかかりつけ医へご相談ください。

    既存の予防治療薬は、片頭痛の病態に沿って開発されたものではなく、予防効果が十分でない場合もあります。既存の予防治療薬を2ヶ月以上使用しても、頭痛発作頻度または日数の50%以上の減少しない場合には、新規の予防治療薬(CGRP関連製剤)の開始を検討します。

    新規の予防治療薬(CGRP関連製剤)
    新規の予防治療薬(CGRP関連製剤)

    CGRP関連製剤は、既存の予防治療薬と異なり、片頭痛の病態、機序に沿って開発された片頭痛専用の頭痛予防治療薬です。既存の予防治療薬で、効果が乏しい場合には、2021年に国内で使用可能になったCGRP関連製剤の開始を検討します。CGRP(Calcitonin Gene-Related Peptide、カルシトニン遺伝子関連ぺプチド)は、三叉神経節や硬膜上の三叉神経末梢に存在する神経ペプチドであり、過剰に発現し、⾎管拡張作⽤、神経原性炎症を介して、⽚頭痛発作を引き起こします。CGRPは、片頭痛発作の原因物質と考えられており、片頭痛の方では高値であり、頭痛発作時に特に上昇します。
    CGRP関連製剤は、1ヶ月または3ヶ月に1回の皮下注射により、頭痛の頻度、程度を改善し、80%以上の方で、投与開始3ヶ月以内に頭痛回数が半数以下に減少すると報告されています。実際にCGRP関連製剤を使用した方では、頭痛がほとんどなくなり、頭痛がない時にも、倦怠感、頭重感がなくなり、いつ頭痛がくるかわからない不安から解放され、仕事や家事に集中できるようになったり、趣味を楽しめるようになった方も沢山いらっしゃいます。ただし、CGRP関連製剤は、使用できる患者様に制限があり、高価な薬剤ですので、興味のある方は、まずはご相談ください。

    実際にCGRP関連製剤を投与した方の特徴・効果

    CGRP関連製剤を投与した方の特徴

    片頭痛患者 CGRP関連製剤投与患者
    (のべ人数)
    CGRP関連製剤
    未投与患者
    患者数 (人) 401 63 338
    女性の割合 (%) 82.4 95.2 75.4
    年齢 (歳) 43.7± 7.2 40.5 ± 6.7 46.2 ± 7.5
    頭痛回数/月 (回) 7.8 ± 5.9 15.8 ± 6.7 4.7 ± 6.5
    HIT-6 (投与前) 47.7 ± 7.2 59.9 ± 6.3 28.2 ± 7.2
    精神疾患 (%) 20.1 20.3 19.8
    薬物乱用頭痛 (%) 29.2 84.1 20.1

    CGRP関連製剤投与の効果

    CGRP関連製剤投与患者
    患者数 (人) 63
    女性の割合 (%) 95.2
    投与前の平均頭痛回数 (回) 15.8 ± 6.7
    投与3ヶ月後の平均頭痛回数 (回) 6.4 ± 4.8
    頭痛回数の減少率の平均 (%) 70.1 ± 7.2
    50%以上頭痛回数が減少した人 (%) 92.1
    投与前のHIT-6 59.9 ± 6.6
    投与3ヶ月後のHIT-6 45.2 ± 7.4
    薬物乱用頭痛が改善した人 (%) 85.7

    過去に頭痛外来でCGRP関連製剤を使用した方のデータです。CGRP関連製剤を使用した多くの方で、頭痛回数が50%以下へ減少し、頭痛の日常生活への支障度を評価するHIT-6も改善しました。
    しかし、ほぼ完全に頭痛が無くなる方、半分程度までしか頭痛回数が減少しない方、投与開始後すぐに効果がある方から、効果が出るまで3ヶ月程度かかる方など様々で、効果に個人差はあります。CGRP関連製剤を使用するかは、確実な片頭痛の診断を行い、治療適応の有無を慎重に判断することが重要です。

    CGRP関連製剤開始の条件

    CGRP関連製剤の導入に必須の患者条件
    1. 国際頭痛分類を参考に十分な診療を実施し、前兆のある又は前兆のない片頭痛の発作が月に複数回以上発現している、又は慢性片頭痛であることが確認されている。
    2. 本剤の投与開始前3ヶ月以上において、1ヶ月あたり頭痛回数が平均4日以上である。
    3. 活動性の低下、睡眠、食生活の指導、適正体重の維持、ストレスマネジメント等の非薬物療法及び片頭痛発作の急性期治療等を既に実施している患者であり、それらの治療を適切に行っても日常生活に支障をきたしている。
    4.

    本邦で既承認の片頭痛発作の発症抑制薬(プロプラノロール塩酸塩、バルプロ酸ナトリウム、ロメリジン塩酸塩等)のいずれかが、下記①-③のうちの1つ以上の理由によって使用又は継続できない。

    1. 効果が十分に得られない。
    2. 忍容性が低い。
    3. 禁忌、又は副作用等の観点から安全性への強い懸念がある。

    以上の4点を満たしていることが、CGRP関連製剤の導入に必須の患者条件になります。更に、薬物乱用頭痛の合併、副作用、既往症の影響などで他の片頭痛治療薬の使用に制限がある、ストレスの回避が難しい、頭痛の日常生活への支障が大きい方などには、積極的に導入を検討します。

    2023年1月現在、国内では3剤のCGRP関連製剤が使用可能です。それぞれ、メリット、デメリットがあるので、患者さんと相談しながらどの製剤を選択するかを決定します。

    CGRP関連製剤を導入する上での一番の大きな問題点は、費用です。注射費用、処置料などを含め、1ヶ月につき13,000円程度(3割負担の方の自己負担分)の費用がかかりますが、片頭痛は、原則、命にかかわる疾患ではなく、CGRP関連製剤の導入は必須ではありません。しかし、毎月または3ヶ月に1回の注射で、頭痛があるのが当たり前の日常、いつ頭痛が起きるかわからないという不安から解放され、安心して生活できるようになる可能性があります。また、鎮痛剤の減量分の薬剤費のコストカット、仕事の効率が改善することを考えると、高くないと考える方もいらっしゃいます。

    1日400円(コーヒー1杯分)の価値があると思うなら、試してみてもいいのでしょうか。CGRP関連製剤に関して、ご不明な点がありましたら、気軽にご相談ください。

    国内で使用可能なCGRP関連製剤(2023年1月時点)

    一般名 商品名 作用機序 投与方法/用量 特徴(私見あり)
    Galcanezumab エムガルティ® 抗CGRP抗体
    (ヒト化抗体、IgG4)

    皮下注射
    4週ごとに1本

    初回投与、再開時は
    2本投与によるloadingが必要

    • 頭痛の頻度減少、QOL向上させる。
    • 国内での使用実績が多い。
    • 初回、再開時のloadingにより、
      即効性ある印象。
    • 常温に戻しても、
      合計7日間まで再冷蔵可能。
    Fremanezumab アジョビ® 抗CGRP抗体
    (ヒト化抗体、IgG2a)
    皮下注射
    ①4週ごとに1本
    ②12週ごとに3本
    • 頭痛の頻度減少、仕事、家事の遂行機能、
      QOLを向上させる。
    • 4週間か12週間ごとに投与するかを選択可能。
    • 即効性がある印象。
    • 持続性がある印象。
    Erenumab アイモビーグ® 抗CGRP受容体抗体
    (ヒト抗体、IgG2)
    皮下注射
    4週間に1本
    • 頭痛の頻度減少、仕事、家事の遂行機能、
      QOLを向上させる。
    • 唯一の抗CGRP受容体抗体で
      他の2剤と作用機序が異なる。
    • 皮膚反応がやや少ない印象。
    • 中和抗体リスク低く、
      持続的な効果が期待できる可能性がある。

    頭痛の診療ガイドライン2021などを参考に院長作成

    あくまで私見ですので、使用する際は、必ずかかりつけ医へご相談ください。

    注意点
    • CGRP関連製剤の投与は、予約制です。注射希望の3日前までに必ずご予約ください。
    • 予約日、予約時間変更時には、必ずご連絡ください。
    • 発熱、体調不良により、注射が可能か判断できない場合には、ご連絡ください。
    • 全ての製剤は、冷蔵庫から取り出し30分以上かけ、常温にしてからの投与が推奨されています。予約時間外での受診の場合は、待機時間が長くなる場合があります。
    • 投与間隔が4週間空いていても、同月の投与は原則できないのでご注意ください。
    • 全製剤共に、上腕、大腿、腹部などへの皮下注射で投与しますので、来院時の服装にご注意ください。
    • 全製剤共に10-20%程度、皮下注射部に掻痒感(かゆみ)、発赤(赤くなる)、腫脹(腫れる)などの副反応があらわれる場合があります。
    • 全製剤共に、アナフィラキーショックなどのアレルギーのリスクがあるため、当院では皮下注射後に初回は30分間、2回目以降は15分間、院内で経過観察とさせていただきます(初回投与時アレルギー症状がある方、既往症など次第でが30分間待機の場合があり)。

緊張型頭痛

緊張型頭痛、片頭痛の特徴

緊張型頭痛 片頭痛
有病率 22.3% 8.4%
痛みの特徴 圧迫感または締め付け感 拍動性
痛みの程度 軽度-中等度 中等度-重度
痛みの部位 両側性 片側性または両側性
持続時間 30分-7日間 4 - 72時間
随伴症状 悪心や嘔吐はない。
光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ。
悪心、嘔吐、光過敏、音、匂い過敏
誘因 肥満、運動不足、喫煙、精神的、 肉体的ストレスなど 精神的、肉体的ストレス、ストレスからの解放、疲れ、 月経周期、天候の変化、音、光、匂い、運動、空腹、 脱水、アルコールなど

緊張型頭痛の方は日本国内に2000万以上おり、頭痛の原因疾患の中で最も多い疾患で、ほとんどの方が人生で1回は経験する疾患です。
長時間のデスクワークなどによる頭部や頸部の筋肉の長時間の緊張、精神的ストレス、頚椎症などが原因でおこります。片頭痛と類似している点も多く、誤った診断、治療により、薬物乱用頭痛の合併などを合併してるケースもあります。

緊張型頭痛の特徴

日常的な動作で痛みが増強すること、悪心、嘔吐を伴わないこと、日常生活に支障をきたさない点です。

治療

緊張型頭痛は、薬物を使用せず、肉体的、精神的ストレスの回避、運動、頭痛体操のみで改善する場合もあります。
生活習慣の改善でも改善しない場合は、消炎鎮痛剤、漢方薬、抗不安薬などの内服薬で治療を開始します。
重度の肩凝りが原因の場合は、凝りが強い筋肉に、細い針でトリガーポイント注射を行う場合もあります。

頭痛体操

頭痛体操

群発頭痛(TACs:三叉神経・自律神経性頭痛)

  • 30歳代以降の男性に多い。
  • 片側の眼の周囲、前頭部、側頭部にかけて、えぐられるような激しい頭痛。
  • 頭痛と同側の眼の充血、涙が止まらない、鼻がつまる、瞼が下がるなどを必ず頭痛に伴う。
  • 頭痛は、夜間や就寝前、睡眠中に起こることが多い。
  • 毎年1回程度、1時間程度の頭痛が1ヶ月続く(群発期)。
  • 頭痛が続く時期、全く起こらなくない時期がはっきりしている。

群発頭痛とは

緊張型頭痛、片頭痛に比べ、頻度は少ないですが、片側性の頭痛で、視野前兆、悪心、嘔吐を伴うことがあることから片頭痛と診断されている場合もあります。男性に圧倒的に多い疾患で(男性が女性の13.5倍)、頭痛の程度は、かなり強く、落ち着かずに歩き回ったり、のたうち回る方もいます。

原因

群発頭痛の明確な原因は不明ですが、視床下部からの刺激が、上唾液腺核からの副交感神経、三叉神経血管系を興奮させ、海綿静脈洞部の炎症や血管拡張を引き起こし、片頭痛の原因となるCGRP(Calcitonin Gene-Related Peptide、カルシトニン遺伝子関連ぺプチド)が病態に関与している可能性が考えられています。

急性期治療

スマトリプタン皮下注射と酸素吸入などで治療を行います。しかし、十分な効果があるとは言えず、新規の治療開発が望まれます。

予防治療

カルシウム拮抗薬、ステロイド、ガバペンチン、トピラマート、バクロフェンなどの内服で行いますが、効果は限定的です。飲酒、喫煙が頭痛悪化の誘因となるため、禁煙、禁酒、熱い風呂の入浴を避けるなどの非薬物療も重要です。

海外の治療

海外では、急性期のニューロモデュレーション治療、片頭痛の予防治療で使用するガルカネズマブ皮下注射での予防治療が認められており、今後は我が国でも、治療選択肢が増えることが望まれます。群発頭痛の頭痛は重度であり、日常生活に支障をきたしている方が多くいらっしゃいます。お悩みの方は、お気軽にご相談ください。

薬物乱用頭痛(薬剤の使用過多による頭痛)

  • 片頭痛や緊張型頭痛などの一次性頭痛をもつ方が、鎮痛薬の使用過多で、頭痛が逆に悪化し、鎮痛薬が効きにくくなった状態。
  • 月に10日以上の鎮痛剤の内服ががあり、3ヶ月以上、1ヶ月に15日以上の頭痛が継続している。
  • 40-50歳代の女性に多い。

違法薬物などが原因の頭痛、一度に大量の鎮痛剤を内服することで起こる頭痛と誤解する方がいますが、薬物乱用頭痛は、鎮痛薬の使用過多で、片頭痛などの元々の頭痛が更に悪化した状態のことです。原疾患の65-81%が片頭痛、4-25%が緊張型頭痛で、頭痛の重症度、部位は様々で、連日、頭痛がおこるようになります。
腹側被蓋から前頭前部、辺縁系、線条体、三叉神経脊髄路核などのドパミン神経系の過剰、セロトニンの関与などが考えられますが、明確な病態は不明です。簡単にいうと、鎮痛剤の使用過多で、頭の中の痛みセンサーが故障して、治療が難しくなった状態の頭痛のことです。

原因の急性期治療薬の中止後にも改善せず、再発を繰り返すことも多く、日常生活への支障度が高く、繰り返す頭痛により仕事の効率が低下したり、過剰な急性期治療薬使用による治療費も問題になります。
急性期治療薬を10回/月以上している方はご注意ください。予防治療薬を開始し、急性期治療薬の減量が必要です。

薬物乱用頭痛の割合、薬物乱用頭痛の認知率

上記は、私が頭痛外来で診察した方のデータです。薬物乱用頭痛の頻度は想像以上に高く、特に片頭痛の方は半数以上の方で薬物乱用頭痛が合併していました。
また、頭痛患者さん、医療関係者共に、薬物乱用頭痛の認知度は非常に低く、過剰に鎮痛薬を処方している医療機関もが少なくないことも問題です。鎮痛剤の効果乏しく、頭痛が悪化し、慢性化している場合には、薬物乱用頭痛を合併している可能性もあるので、鎮痛薬の過剰な使用にはご注意ください。

後頭神経痛

  • 後頭部から頭頂部、耳の後ろにかけての片側のみの頭痛。
  • 数秒から数分続く激しく鋭い痛み(チクチク、キリキリ)を繰り返す。
  • 頭皮への刺激で悪化する場合がある。
  • 姿勢の悪さ、長時間パソコンに向かう、スマートフォンの使いすぎ、肩凝り、頸椎症、精神的なストレスなどがきっかけなることがある。

近年、スマートフォンやパソコンの普及、テレワークをする方の増加に伴い、後頭神経痛の患者さんが増加傾向です。後頭部から頭頂部、耳の後ろにかけて(大後頭神経、小後頭神経、大耳介神経領域)に頭痛を認めます。マッサージなどを行うと、神経が刺激され、頭痛が悪化する場合があるので、ご注意ください。悪化時には、内服加療を行いますが、効果が乏しい場合も多く、薬剤の副作用で、眠気、ふらつきなどが多いことから、内服薬を開始するかは慎重に検討が必要です。
多くの方が1ヶ月程度で改善しますが、長期間改善しない場合は、歯科疾患、帯状疱疹、椎骨脳底動脈解離、三叉神経痛など他疾患が原因の場合もありますので、後頭神経痛か心配な方は、ご相談ください。