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墨田区両国の内科・脳神経内科・老年内科

脳神経内科

脳神経内科について

脳神経内科について

脳神経内科は、脳や脊髄、神経、筋肉に関連した疾患を診察し、認知症、頭痛、脳卒中、てんかん、パーキンソン病、ギランバレー症候群、重症筋無力症、多発性硬化症などが代表的な疾患です。現在、認知症の方は700万人、片頭痛の方は800万人、脳卒中の方は、年間で100万人以上、てんかんの方は100万人、パーキンソン病の方は、15万人以上おり、更に増加していくことが予想されています。
近年、医療の発展に伴い、様々な検査が可能になり、多くの疾患の診断が可能になりました。しかし、脳神経内科の分野は分かっていないことも多く、個人差も大きいことから、症状や経過の問診、神経診察、検査所見から総合的に診療をすることが最も重要であることは、今も変わりません。

当院では、今までの経験を活かし、患者さんの訴え、症状、経過の問診、身体診察に重点を置き、診断、治療を行いますので、お気軽にご相談ください。

脳神経内科の代表的疾患

  • 頭痛関連(片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、後頭神経痛、薬物乱用頭痛)
  • 認知症関連(アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、アミロイドアンギオパチー)
  • 脳卒中(脳梗塞、一過性脳虚血性発作、脳出血、くも膜下出血、頭蓋内・頸動脈狭窄症)
  • 変性疾患(パーキンソン病、むずむず脚症候群、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症)
  • 他の脳神経疾患(てんかん、筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症、多発性硬化症、末梢神経障害、正常圧水頭症)
  • その他の疾患(頸椎症、脊柱管狭窄症、めまい症)など

上記以外にも対応可能な場合があるので、ご相談ください。

どんな症状で相談すればよい?

  • 頭が痛い、頭が重い、肩や首が凝る。
  • もの忘れ、動作が遅い、手足が震える、体がこわばる。
  • 顔面、手足に力が入りにくい、しびれ、感覚が鈍い。
  • めまい、物が二重にみえる、まぶたが下がる。
  • 呂律がまわらない、物が飲み込みにくい。
  • 歩く速度が遅い。転びやすい。
  • 意識をよく失う。

上記などの脳や脊髄、神経、筋肉に関連した症状を診療します。脳神経外科、整形外科、精神科、心療内科の疾患が原因の場合もあり、重複する疾患もあります。
また、神経症状が初発症状で、癌、心疾患、血液疾患、代謝、内分泌疾患などの疾患がみつかることもあります。診察の結果、脳神経内科以外の疾患が考えられる場合は、適切な診療科にご紹介する総合診療的な役目も担いますので、どの診療科を受診すればよいかわからない場合にも、お気軽にご相談ください。

脳神経内科と精神科、心療内科、整形外科、精神科との違い

診療科目 診療内容 代表的な疾患
脳神経内科 脳や脊髄、神経、筋肉に関連した疾患を診察する診療科。 症状の原因を特定し、適切な診療科へ紹介する役割もある。 頭痛、認知症、脳卒中、パーキンソン病、てんかん、重症筋無力症、脊柱管狭窄症、めまい症、末梢神経障害など
脳神経外科 脳神経、脊髄症状の主に手術を行う診療科。 脳腫瘍、脳卒中、脳血管奇形、もやもや病、頭痛、硬膜下血腫など
心療内科 精神的な問題が原因で、身体に異常をきたな疾患を扱う診療科。 自律神経失調症、身体表現性障害など
整形外科 運動器官 (骨、筋肉、 靭帯、神経など) の診療を行う診療科。 骨折、脊柱管狭窄症、頚椎症、手根管症候群、腰痛など
精神科 主に気分の不調、精神的な問題を扱う診療科。 鬱病、双極性障害、統合失調症、摂食障害、各種依存症など

院長作成

  • 医療機関により、診療内容、対応可能な疾患は異なります。あくまで目安です。

手足のふるえ

ふるえの原因となる代表的な疾患
変性疾患 パーキンソン病、皮質性小脳萎縮症、遺伝性脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、アルツハイマー病、脳血管性認知症、脳血管性パーキソニズム
その他の神経疾患 本態性振戦、てんかん、小脳炎、自己免疫性脳炎、クロイツフェルト-ヤコブ病、ハンチントン病、Chiari奇形、正常圧水頭症、脳卒中、脳腫瘍
全身疾患に伴うもの 敗血症、尿毒症、甲状腺疾患、ビタミン・微量元素欠乏、アルコール依存症など

手足のふるえの原因となる疾患は、パーキンソン病以外にも数多くあり、年齢やふるえの部位、ふるえ以外の症状の有無で原因となる疾患の鑑別が大きく異なります。原因疾患の診断には、症状や経過などの問診、神経学的診察が最も重要です。また、MRI、核医学などの追加検査、中核病院を受診する必要があるか、治療方針に関しても、患者様と相談しながら決めていきます。手足のふるえでお困りの方、パーキンソン病が心配な方などはご相談ください。

手足の震えに関連する疾患について執筆した論文

  • A Case of Subacute Combined Degeneration of Spinal Cord Diagnosed by Vitamin B12 Administration Lowering Methylmalonic Acid 2020/01
  • Stratification of disease progression in a broad spectrum of degenerative cerebellar ataxias with a clustering method using MRI-based atrophy rates of brain structures. 2017/06
  • MRI-based Annual Cerebellar Volume Atrophy Rate as a Biomarker of Disease Progression in Patients with Cerebellar Degeneration 2016/12
  • MRI-based cerebellar volume measurements correlate with the International Cooperative Ataxia Rating Scale score in patients with spinocerebellar degeneration or multiple system atrophy. 2016/08
  • Overnight Monitoring of Turnover Movements in Parkinson's Disease Using A Wearable Three-Axis Accelerometer 2016/06

めまい

めまいの原因となる代表的な疾患
脳神経疾患 脳梗塞 (小脳梗塞、Wallenberg症候群、脳幹梗塞)、頸動脈狭窄症、脳出血、硬膜下血腫、前庭性片頭痛、起立性低血圧 、パーキンソン病、皮質性小脳萎縮症、遺伝性脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、脳腫瘍、てんかん、多発性硬化症
耳鼻科疾患 良性発作頭位めまい症 (BPPV)、メニエール病、前庭神経炎、持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPV)
その他 貧血、不整脈、感染症、低血糖、ビタミン・微量元素欠乏、薬剤性、うつ病など

めまいの原因となる疾患は、良性発作性頭位めまい(BPPV)、メニエール病、持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPV)などの耳鼻科疾患の頻度が多いですが、耳鼻科疾患以外も、脳梗塞、片頭痛、パーキンソン病、貧血、消化管出血などの脳神経疾患、不整脈、貧血などの内科疾患が原因の場合もあります。特に、めまいのみで発症する脳梗塞(脳幹、小脳梗塞)の場合には、頭部CT検査、頭部MRI検査上は異常所見を認めない場合もあるため、問診、神経学的診察が診断には重要です。
症状、診断次第では、MRI検査などの追加検査、中核病院、他の診療科の受診をおすすめする場合もあります。めまいでお悩みの方は、ご相談ください。

めまいに関連する疾患について執筆した論文

  • Opalski syndrome treated with intravenous recombinant tissue type plasminogen activator -Case Report and Review of Literature 2020/08
  • A Case of Subacute Combined Degeneration of Spinal Cord Diagnosed by Vitamin B12 Administration Lowering Methylmalonic Acid 2020/01

しびれ

しびれの原因となる代表的な疾患
自己免疫疾患 視神経脊髄炎、多発性硬化症、ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)
末梢神経障害 家族性アミロイドポリニューロパチー、POEMS症候群(クロウ・深瀬症候群)、遺伝性圧脆弱性ニューロパチー、MAG抗体陽性ニューロパチー、Charcot-Marie-Tooth: CMT)病
その他の神経疾患 脊柱管狭窄症、手根管症候群、肘部管症候群、ギオン管症候群、むずむず脚症候群(レストレスレッグ症候群)、亜急性連合性脊髄変性症、HTLV-1関連脊髄症、脊髄炎、三叉神経痛、後縦靭帯骨化症、モートン病、外側大腿皮神経障害、腓骨神経障害
血管関連 脳梗塞(椎骨脳底動脈解離、Wallenberg症候群)、前脊髄動脈症候群、後脊髄動脈症候群
全身疾患に伴うもの 糖尿病、甲状腺疾患、血管炎、膠原病、Sjogren症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、帯状疱疹、悪性腫瘍、IgG4関連疾患、薬剤の副作用、ビタミン・微量元素欠乏など

しびれの原因となる疾患は数多くありあります。診断が難しいケース、稀少疾患もありますが、当院では、症状や経過などの問診、神経学的診察などから、診断、治療を行います。MRI検査や神経伝導検査などの追加検査の必要性、中核病院や他の診療科を受診したほうがよいか、治療方針などに関して、患者様と相談しながら、決めていきます。
しびれは、日常生活に支障をきたすことが多く、診断や治療や遅れにより重篤な経過をきたす場合や、内科疾患が診断されることもあります。しびれでお困りの方、どの診療科を受診していいかお悩みの方はご相談ください。

しびれに関連する疾患について執筆した論文

  • Opalski syndrome treated with intravenous recombinant tissue type plasminogen activator -Case Report and Review of Literature 2020/08
  • A Case of Subacute Combined Degeneration of Spinal Cord Diagnosed by Vitamin B12 Administration Lowering Methylmalonic Acid 2020/01
  • Utility of osteosclerotic lesion biopsy in diagnosis of POEMS syndrome : A case report 2017/1

代表的な疾患

脳卒中後遺症に対するボツリヌス治療

脳卒中、頭部外傷などが原因で、手足の筋肉がつっぱり動かしにくくなる「痙縮(けいしゅく)」が後遺症として残存する場合があります。痙縮は、リハビリテーション、日常生活に支障をきたしたり、指が手に食い込み痛みや皮膚の感染を引き起こす場合があります。
ボツリヌス治療は、ボツリヌス菌を筋肉に注射することで、固まった筋肉を柔らかくし、手足の動きがスムーズになる、関節変形の予防、痙縮による痛みを和らげるなどの効果が期待でき、ボツリヌス注射から3日程度で効果が出現し、3ヶ月程度に持続的な効果が得られます。ボツリヌス治療は保険診療ですが、費用が高額であり、症状、重症度、部位によりボツリヌス注射の適応がない場合もあります。
興味のある方、ご希望の方は、ご相談ください。

ボトックスイメージ
痙縮による姿勢以上の主なパターン(上肢)

痙縮による姿勢以上の主なパターン(上肢)

痙縮による姿勢以上の主なパターン(下肢)

痙縮による姿勢以上の主なパターン(下肢)

脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血性発作)

脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血性発作)
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血性発作)

脳卒中とは

脳血管の障害によって、突然、手足が動かなくなる、しびれ、言葉が話せなくなる、意識が無くなるなどの発作を「脳卒中」と呼んでいます。脳卒中には、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」、脳動脈瘤が破裂する「くも膜下出血」に大きく分類できます。脳卒中の中では、脳梗塞が76%と最多で、次に脳出血が18.5%、くも膜下出血が5.6%です。

脳卒中は、日本人の寝たきりの原因疾患の第1位、死亡原因の第4位で、発症すると重篤な経過を辿ります。脳卒中は、脳血管の障害により、心臓から脳細胞へ運ばれていた酸素、栄養が行き渡らなくなり、脳卒中を発症した瞬間から、脳細胞は徐々に死滅していきます。1度死滅した細胞は生き返ることなく、死滅した脳細胞の部位により、様々な神経症状が出現します。

近年では、様々な急性期治療が可能になりましたが、依然、亡くなる方や後遺症を残す方が大勢います。動脈硬化、不整脈、脳血管狭窄、頸動脈狭窄、脳動脈瘤などの脳卒中のリスクの早期発見、予防、治療により、脳卒中の発症を未然に防ぐことが最重要です。

当院の診療

当院では、脳卒中リスクの早期発見、治療による発症予防、発症した方の脳卒中再発予防、脳卒中後遺症の治療などを行います。

  • 急性期脳卒中(症状が出始めて1日以内の脳卒中)が疑われる場合には、頭部CT検査または頭部MRI検査の施行可能な病院への受診をおすすめします。(こんな時は脳卒中を疑います。

急性期脳卒中は、1秒でも早く診断し、治療を開始することが重要です。特に、脳梗塞は、症状が出現してから4.5時間以内では血栓溶解療法(t-PA)、症状が出現してから8時間以内ではカテーテル治療が可能です。
症状出現から4.5時間、8時間以内に治療を開始すればよいのではなく、1秒でも早い治療が予後を改善させます。受診や治療の遅れは、治療効果や後遺症の程度に大きく影響します。

こんな時は脳卒中を疑います。

脳卒中を疑う人を見たら、3つのテスト【FAST(ファスト)】をチェックしましょう。

こんな時は脳卒中を疑います。

血栓溶解療法(t-PA)

脳や頚部の血管の血栓を点滴で溶解し、閉塞した血管を再開通させる治療です。

カテーテル治療

脳や頚部の血管の血栓をカテーテル(細い管)で吸引、破壊し、閉塞した血管を再開通させる治療です。

Q&A

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の症状はどう違う?
結論から言うと、3つの疾患を症状で見極めることは難しいです。
脳出血、くも膜下出血では血圧が上がりやすい、くも膜下出血では、激しく頭痛を伴いやすいなどの特徴はありますが、特徴を欠く場合も多くあり、症状だけは鑑別することは難しいです。
全疾患共に、脳細胞を障害する点は共通しており、症状の違いは、疾患ではなく、脳のどの部位に発症するかにより大きく影響されます。広範囲だから重篤とは限らず、脳幹などの神経が集中している部位では小さい病変でも重篤な症状をきたす場合もあります。
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の鑑別には、頭部CT検査、頭部MRI検査が有用です。

脳梗塞

脳梗塞
脳梗塞

脳梗塞は、脳や頸部の動脈の狭窄、途絶により、心臓から脳細胞へ血液が流れにくくなる疾患です。動脈硬化が原因のラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、不整脈(主に心房細動)が原因の心原性脳梗塞の3つに大きく分類されます。

脳梗塞と診断されたら

抗血栓薬(血をサラサラにする薬)の内服による再発予防が必要です。抗血栓薬には、抗血小板薬、抗凝固薬が含まれ、脳梗塞の原因、年齢、併存疾患により、適切な薬剤をしなければ、脳梗塞の十分な再発予防にはなりません。

抗血栓薬について

抗血栓薬は、脳梗塞、心筋梗塞などの血栓症の発症、再発予防効果はありますが、胃潰瘍、消化管出血、脳出血などの出血イベントのリスクを高めてしまう副作用もあるため、薬剤の選択には注意が必要があります。特に無症候性脳梗塞(別名:かくれ脳梗塞。症状はないが、脳ドックなどの頭部MRI検査で偶然発見された脳梗塞)に対して、抗血栓薬を内服するかは慎重な判断が必要です。

また、脳梗塞の再発予防には、抗血栓薬だけではなく、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の適切な管理、治療が必要も重要です。脳梗塞の既往症があり、現在、内服治療中の方も、お気軽にご相談ください。

1.ラクナ梗塞

脳の細い動脈の閉塞で発症する脳梗塞です。脳梗塞の大きさは15mm以下と小さいですが、branch atheromatous disease(BAD)型脳梗塞という、症状が急激に進行しやすいタイプもあり注意が必要です。また、ラクナ梗塞では、他の脳梗塞に比べ、脳出血、脳血管性認知症(Vascular dementia)を合併しやすいことが知られています。

予防・治療

ラクナ梗塞は、高血圧が最大のリスクであり、生活習慣、内服治療などで、高血圧の治療をすることが重要です。ラクナ梗塞を発症した場合には、抗血小板剤による再発予防、降圧剤による厳密な血圧管理が必要です。

ラクナ梗塞の頭部MRI画像

ラクナ梗塞の頭部MRI画像

2.アテローム硬化性脳梗塞

アテローム硬化性脳梗塞の(頭部MRA検査:A、頭部MRI検査:B)
アテローム硬化性脳梗塞の
(頭部MRA検査:A、頭部MRI検査:B)

脳や頚部の脳の太い動脈の狭窄や閉塞で発症する脳梗塞です。糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙、多量の飲酒などが原因の動脈硬化により発症します。動脈硬化の進行と共に発症しやすくなるため、動脈硬化のリスクコントロールと抗血小板薬の内服が発症の予防には重要です。

検査

頸動脈狭窄が原因の脳梗塞の方は、初期は、一過性の脳神経症状(一過性脳虚血性発作:TIA)などのみで、頸動脈狭窄の進行と共に、脳梗塞を発症する場合もあります。頸動脈狭窄は、頭部MRI検査、頸動脈超音波検査などで診断を行います。

予防

頸動脈狭窄症は、早期の診断、抗血小板剤内服、動脈硬化リスクのコントロール、頸動脈ステント留置術(CAS:Carotid artery stenting)とよばれる頸動脈の狭窄部へのステント留置により脳梗塞の発症を予防できるケースもあります。当院でも頸動脈超音波検査は可能ですので、心配な方はご相談ください。

頸動脈超音波検査についてはこちら

3.心原性脳梗塞

A:頭部MRI検査、B:頭部MRA検査
A:頭部MRI検査、B:頭部MRA検査

予兆なく重篤な神経症状が出現することから、「ノックアウト型脳梗塞」と呼ばれることもあります。
年齢と共に頻度が増加する心房細動という不整脈が主な原因で、高齢者の方の脳梗塞の原因では最多です。

心房細動による心原性脳梗塞

心房細動の患者さんの平均5%が毎年、心原性脳梗塞を発症し、心房細動のない集団に比べて、脳梗塞発症リスクを2-7倍に高めます。心房細動は、心臓の左心房という部位の動きが悪くなり、心臓の中に血栓(血の塊)ができやすくなります。血栓が心臓からの血流にのり、脳や頚部の動脈を閉塞させ、脳の細胞に酸素や栄養が届かなくなり、脳梗塞を発症します。心原性脳梗塞では、広範囲の脳梗塞を生じ、t-PAやカテーテルなどの超急性期治療を行っても、重篤な後遺症を残すことが多く、適切な予防薬による治療が最も重要な脳梗塞です。

心房細動の症状と予防

心房細動は症状がないことが多いため、健康診断などで発見されることが多く、CHA2DS2-VAScスコアなどを参考に抗凝固薬を内服し、脳梗塞の発症を予防を行います。年齢や、症状状態次第ではカテーテルアブレーションと呼ばれるカテーテル治療を行う場合もあります。心房細動の指摘が過去にある方、心配な方はご相談ください。

CHA2DS2-VAScスコア
CHA2DS2-VAScスコア

4.その他の脳梗塞

癌、感染症、血液疾患、感染症、膠原病、自己免疫疾患、血管奇形、代謝疾患などが原因で、脳梗塞を発症することがあり、脳梗塞発症を契機にこれらの疾患が見つかる場合もあります。
特に、若い方、動脈硬化、心房細動などの脳梗塞のリスクが少ない方、繰り返し脳梗塞を発症する方は、脳梗塞の原因をしっかりと調べる必要があります。脳梗塞と診断されていても、多発性硬化症、視神経脊髄炎、脳腫瘍、てんかん、ミトコンドリア病など、脳梗塞以外の疾患であることも稀にあるので、適切な診断が重要です。

一過性脳虚血発作(TIA)

一過性脳虚血発作(TIA)とは

一過性脳虚血発作(TIA)とは、運動麻痺、呂律が回らない、言葉でにく、手足のしびれ、片側の目が見えにくくなるなどの、脳梗塞と同様の症状が一時的に起こりますが、24時間以内に消失するものです。

脳梗塞との違い

脳梗塞は、脳の血管が完全に閉塞し、脳細胞が壊死した状態ですが、TIAは、脳の血管が一時的に閉塞したものの、すぐに再開通し、脳細胞が壊死に至らなかった状態です。

注意点

症状が改善しても安心してはいけません。TIAは脳梗塞の前兆であり、注意が必要です。治療を行わない場合、TIA患者の約16%が、90日以内に脳梗塞を発症します。特に、その半数以上が48時間以内の脳梗塞を発症し、TIAの発症直後に、脳梗塞を発症する危険性が非常に高いことがわかっています。

下記のABCD2スコアが高い方は、脳梗塞発症リスクが高く、特に注意が必要です。

ABCD2スコア

ABCD2スコア

診断

TIAと診断した場合には、適切な診断、抗血栓薬での治療を開始することで、脳梗塞の発症を未然に防ぐことができます。ただし、症状だけでは、TIAとてんかん、低血糖、感染症、頚椎症、緑内障などとの鑑別が難しいケースもあります。
症状、脳卒中のリスク、神経診察、既往症、検査所見などを元に診断し、TIAが疑われる場合には、連携医療機関へご紹介させていただく場合があります。TIAが心配な方は、遠慮なくご相談ください。

脳出血

脳出血

脳出血とは

脳の細い動脈が裂け、脳内に直接出血する疾患です。出血した血液が、脳細胞を障害し、頭痛、嘔吐、意識障害、手足の麻痺、しびれなどの症状が出現します。
脳出血の原因は、高血圧が約8割を占めますが、脳血管奇形、血液疾患、自己免疫疾患、アミロイドアンギオパチー、抗血栓薬内服の副作用によって、脳出血を発症する場合もあります。

脳出血の頭部CT画像

脳出血の頭部CT画像

脳出血の後遺症

生活習慣の改善、医学の発展により、脳出血による死亡率は減少傾向ですが、意識障害、顔面、手足の重篤な麻痺、言語障害などの重度な後遺症が残り、社会復帰が難しいケースも少なくありません。

治療

点滴による降圧管理、脳浮腫の予防、手術による血種除去になりますが、発症部位によっては手術が難しいケースもあります。
高血圧や生活習慣病などの動脈硬化リスクの管理、頭部MRI検査による脳血管の評価により、発症を予防することが重要です。

くも膜下出血

くも膜下出血とは

多くの場合は、脳動脈瘤(脳血管に発生したこぶ)の破裂により発症します。脳動脈瘤の破裂により、出血がおこり、脳の表面にあるくも膜の下に出血が広がり、脳細胞を障害します。頭痛、嘔吐、意識障害、重度の麻痺などを認め、50%の方が亡くなり、25%の方に重大な後遺症が残り、25%の方が、社会復帰できると報告されており、脳卒中の中で最も重篤な経過をたどります。

脳動脈瘤は、加齢、高血圧、喫煙、動脈硬化なども原因となりますが、遺伝因子も原因として知られているため、ご家族に脳動脈瘤、くも膜下出血の既往症がある方は、注意が必要です。

くも膜下出血の頭部CT画像

くも膜下出血の頭部CT画像

治療

くも膜下出血を発症した場合には、原則、開頭手術またはカテーテルでの治療が必要になります。
脳動脈瘤は、脳ドックなどで発見されます。
大きさ、形態などにより、無症状の場合にも、コイル塞栓術により、治療をすることで、発症を防ぐことも可能です。

定期的な検査をおすすめする方

過去の頭部MRI検査で、脳動脈瘤の指摘のある方、ご家族に脳動脈瘤、くも膜下出血の既往症がある方は、頭部MRI検査などでの定期的な画像検査をおすすめします。

パーキンソン病

パーキンソン病とは

パーキンソン病とは

パーキンソン病とは?

50歳以上の方に発症することが多く、年齢と共に増加する病気です。稀な病気ではなく、日本では15万人以上の患者さんがおり、今後、更に患者数が増えていくことが予想されています。
パーキンソン病の方では、α-シヌクレインという異常な蛋白質が神経細胞に蓄積し、レビー小体が形成されることで、パーキンソン病を発症すると考えられています。脳の黒質という部分などの神経細胞が主に障害され、ドパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質が減少し、体の筋肉を動かす神経がうまく働かなくなり、動作緩慢(体の動きが鈍い)、振戦(顔面や手足が震える)、固縮(手足の関節が固くなる)、姿勢反射障害(転びやすい、体が傾く、ふらつき)などの症状が出現します。

パーキンソン病では、減少したドパミンを補充する薬剤、ドパミンが体内で分解されにくくする薬剤などの内服で、症状が改善しますが、治療薬を長期間使用していると、徐々に薬剤が効きづらい、効きすぎる、効果が切れやすいなどが生じやすくなります。現在、パーキンソン病の治療薬は20種類以上ありますが、悪心、幻覚、眠気などの副作用があるため、年齢、認知機能、症状、ライフスタイルに適した治療薬を選択する必要があります。

パーキンソン病は、高齢者に多い疾患であり、便秘、高血圧、糖尿病、心不全、脂質異常症、骨粗鬆症、不眠、アルツハイマー型認知症などの疾患を併存していることも多く、内服薬の種類が増えがちです。一般内科と脳神経内科で別々の医療機関や診療科目へ通院することは、ご本人、ご家族の負担になる場合もあります。当院では、患者さんの状態、生活環境をみて、患者さんやご家族が困っていることを相談しながら、一般内科、パーキンソン病をまとめて診療できるので、お気軽にご相談ください。

症状

パーキンソン病症状

パーキンソン病では様々な症状を認めますが、動作緩慢・無動(動作が遅い)症状は、必ずあります。その他では、振戦、固縮、姿勢反射障害などの症状が多く、動作緩慢と合わせてパーキンソン病の4大症状と呼ばれています。

動作緩慢以外の症状は、初期には目立たず、途中から出現する方もいらっしゃいますが、最終的には全ての症状がみられる場合が多いです。最近では、嗅覚異常(匂いを感じにくい、変なにおいがする)、便秘、血圧が下がりやすい(起立性低血圧)、頻尿、幻覚、認知症(レビー小体型認知症)、レム睡眠行動異常)、レストレスレッグス症候群(別名:むずむず脚症候群。脚の内側がむずむずと不快になり、脚を動かすと和らぐ)などの症状で発症し、パーキンソン病と後に診断される方が多いことがわかっています。

中でも、パーキンソン病の方は、パーキンソン病と同様にレビー小体が蓄積するレビー小体型認知症を合併することが頻繁にあり、両者には共通する症状が多くあります。しかし、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、内服薬の副作用、内科疾患の合併により認知機能障害が出現しているケースもあるため、適切な診断、治療が重要です。

パーキンソン病が心配な方は、ご相談ください。

動作緩慢(動作が遅い)
  • 動作がゆっくりになり、行動に時間がかかる。
  • 顔の表情筋の動きもゆっくり小さくなり、表情が乏しく、眼の瞬きが少なくなる。
  • 話し方が遅く、小声になり、ろれつが回らない。
固縮(強剛)
  • 手足、体幹の筋肉がこわばって固くなり、自分でスムーズに動かしにくくなる。
  • 無意識のうちに筋肉がこわばり、力がうまく抜けない。
安静時振戦
  • 力を抜いた時、緊張した時に、精神的負荷がかかった場合に、顔や手足が震える。
  • 初期には、片側のみの手足が震え、進行期にも左右差がある。
歩行障害
  • 腕の振りが小さくなり、歩幅が小さくなり、足が上がりくい。
  • 方向転換がうまくできない。
  • 歩き出すと止まらなくなり、突進する。
姿勢反射障害
  • 転びやすい。
  • 背中から前かがみの姿勢になる。
  • 立位、座位で前後左右へ傾きやすくなる。
睡眠の異常
  • 寝付きが悪く、すぐに起きてしまう。
  • 寝返りの回数が減る。
  • 睡眠時に大声を出す、手足を激しく動かす、寝言をいう(レム睡眠行動障害)。
精神症状、認知機能障害
  • 生々しく、実在感のある幻覚。
  • 急に受け答えできなくなる、気分にムラがあるなど、意識レベルの変動が大きい。
  • 抗精神病薬が過剰に効く。
  • 抑うつ症状、気分の落ち込み。
消化器症状
  • 頑固な便秘、悪心、食欲不振、下痢。
  • 唾液の量が、増加する。
  • 食べ物が飲み込みにくい。

診断

パーキンソン病の確定の診断には、脳細胞などの生検検査(細胞を体内から取り出し、顕微鏡で観察し、病理学的に判定する検査)でのα-シヌクレイン、レビー小体の神経細胞への蓄積の証明が必要ですが、ほんどのケースでは、生前に生検検査での診断を行うことはできません。

多くの場合には、症状、経過の問診、神経症状の診察、採血検査、頭部MRI検査、核医学検査(DaT Scan検査、MIBG心筋シンチグラフィー)、ポリソミノグラフィー検査などを行い、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、本態性振戦、薬剤性パーキソニズム、脳血管性パーキソニズムなどのパーキンソン病と類似した症状を認める疾患と鑑別を行い、診断を行います。
典型的な症状、経過の方では、表情、話し方、歩行状態、手足の震えなどの神経症状や問診内容から、すぐに診断がつくケースもあり、診察室に入る際の歩き方、表情、手の震え方のみで、診断が可能な場合もあります。しかし、逆に、初期段階には診断が難しく、経過をみながら診断していくケース、途中で診断が変更になるケースもあります。
パーキンソン病の診断では、各種検査はあくまで診断補助であり、診断には、症状、経過の詳細な問診、神経症状の診察が欠かせません。

治療

治療

近年、新しいパーキンソン病の治療薬が続々と登場し、治療選択肢が増加しています。
しかし、パーキンソン病の内服治療薬は、吐き気、眠気、幻覚、精神症状の悪化、突発性睡眠、心臓弁膜症などの副作用を起こすことが、他の疾患の治療薬より多いため、注意が必要です。内服薬以外でも、貼り薬、Duodopa治療(専用ポンプとチューブを用いて、カセットに入った薬剤を、小腸へ持続的に投与する治療)、脳深部刺激療法(脳に電極を植え込み、電気刺激をする手術治療)なども行われています。

また、パーキンソン病の方では、食事量低下、運動不足により、サルコペニア、フレイルを合併しやすいため、薬剤だけに頼らず、適度な運動、食事も、運動機能の改善には重要です。転倒予防のために自宅をバリアフリーにする、手すりをつける、布団からベッドにする、誤嚥予防のために、食事を飲み込みやすいものへ変更するなど生活環境の調整も欠かせません。

パーキンソン病は、高齢者に多い疾患であり、高血圧、糖尿病、心不全、脂質異常症、骨粗鬆症、不眠、アルツハイマー型認知症などの疾患を併存していることも多く、内服薬の種類が増えがちです。また、一般内科と脳神経内科で、別々の医療機関や診療科目へ通院することは、ご本人、ご家族の精神的、肉体的な負担になる場合もあります。当院では、患者さんの状態、生活環境をみて、患者さんやご家族が困っていることを相談しながら、一般内科、パーキンソン病をまとめて診療できるので、お気軽にご相談ください。

脊柱管狭窄症(頸椎症性脊髄症、腰椎脊髄症)

脊柱管狭窄症(頸椎症性脊髄症、腰椎脊髄症)

脊柱管狭窄症(頸椎症性脊髄症、腰椎脊髄症)とは

脊柱管狭窄症(頸椎症性脊髄症、腰椎脊髄症)

背骨、椎間板、靭帯などに囲まれた部位を脊柱管と呼び、中心には神経繊維が集中している脊髄が通っています。加齢などにより、骨や椎間板が変形し、脊髄を圧迫し、手足のしびれ、動かしにくさなどの神経障害を起こした状態が脊柱管狭窄症です。
脊髄が圧迫された部位により、神経症状は異なり、脊椎レントゲン検査、MRI検査などで診断を行います。脊柱管狭窄症は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、球脊髄性筋萎縮症(Kennedy-Alter-Sung症候群)、末梢神経障害(糖尿病性神経障害、ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、アミロイドーシス、癌性ニューロパチー、薬剤性ニューロパチー、POEMS症候群)、脳卒中、脊髄腫瘍、脊髄梗塞、亜急性連合制脊髄変性症、視神経脊髄炎、多発性硬化症、サルコイドーシスなどの脳神経内科疾患と症状が類似しているため、しっかりと脳神経内科と鑑別することが重要です。

治療

脊柱管狭窄症の根本治療は手術ですが、入院やリハビリが必要であり、合併症のリスクもあることから、年齢や既往症次第では手術が難しいケースもあります。
手術が難しいケースでは、しびれに対して内服加療を行います。しびれに対しては、使用する薬剤は眠気や消化器症状など副作用が多く、年齢、身体機能、内科の併存疾患を考慮して、治療薬を選択する必要があります。

当院の診断・治療

当院では、脊柱管狭窄症に合併しやすい骨粗鬆症の診断、治療も可能ですので、ご相談ください。
経過、神経症状から、追加検査、手術が必要な場合には、整形外科などの連携医療機関へご紹介する場合もあります。